まあ、ひとつひらいてみまっし 金沢和傘・松田弘
松田 弘(まつだ ひろし) 1924年石川県金沢市生まれ。 12歳の頃から傘職人の親方であった父のもと、各工程を受け持つ弟子職人たちに習い、現在では全工程を一貫生産するただ一人の和傘職人。千日町の松田和傘店でその技を見ることができる。
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美しき川は流れたり、室生犀星がそう詠った犀川のほとり、千日町に松田和傘店はあります。藩政時代から明治、大正と盛んに作られた和傘は、やがて洋傘が普及し始めると、その職人達とともに姿を消していきました。今ではこの松田和傘店二代目松田弘さんが、金沢でただ一人の和傘職人です。30もの工程を一人で一本一本手作りする松田さんの金沢和傘は、雨雪の多いこの地で育まれた伝統を受けて、手入れが良ければ半世紀も使うことができる丈夫さを身上としています。しかし松田さんは「これは、持つ人を美しく見せるための道具だよ」と笑います。 松田和傘店に吊るされた数々の和傘、飾り気のないその姿も、ひとたび開かれればまさに百花繚乱。この鮮やかな紋様と色彩こそが金沢和傘の真骨頂なのです。「和傘は洋傘みたいに合理的じゃないよ。でも合理的じゃないところに和傘の美しさがあると思うんだ。何よりそこが作る喜びだよ」。松田さんが和傘の世界に入って六十五年。金沢和傘の美は、その手によって今日まで受け継がれているのです。 |
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