啓発情報誌 ス・テ・キ
 
加賀友禅 草花の一瞬の美を衣にうつす審美眼

加賀友禅

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 四季折々の草花の美しさを永遠に留めおきたい―。芸術家、工芸家のこうした衝動がもっとも直接的に表れているのが加賀友禅です。機械化を拒み、昔ながらの手仕事の技をかたくなに守る加賀友禅は、数多くの工程において熟練の職人の手を経て製作されます。その最も上流にあるのが、友禅作家による意匠設計であり、彩色とともに友禅作家の個性と感性がもっとも顕著に表れる工程です。作家は金沢の四季おりおりの自然や風景、文化などから着想を得て、加賀友禅の伝統をふまえつつも新鮮で、また着る人の美しさが際出つ意匠を練り上げます。
 絵画調で写実的な表現が特徴的である加賀友禅の世界では、スケッチがすべての基本となります。花が咲いてから、花びらが散り、やがて茎を残すだけになるまで、その花の一生を描き尽くすために、数冊のスケッチブックが費やされることもあります。加賀友禅には、草花の瑞々しいいのちをきものに封じ込めてしまうかのような作家の強い想いが込められているのです。


工程


コラム 更衣の風習
十月一日の更衣(ころもがえ)は、四季の移り変わりがはっきりした日本の風土の中で、平安時代に生まれた習慣で、この日を目安に袷を着用します。季節に応じて仕立て方や素材を替える、色や文様にこだわるという美意識は、和装独特の楽しさです。
秋の代表的な意匠は、菊や楓、秋桜など。色づく山々、実りの時を思わせるあたたかみのある色や、枯葉色、黄土色などしっとりした色を基調にして、秋らしい装いを楽しみたいものです。

匠の技 上田 外茂治 氏●うえだ ともじ
上田 外茂治金沢美術工芸大学で染色を専攻、型絵染や切り絵の世界に興味を持つ。卒業後、大阪のデザイン会社勤務を経て帰沢、二十五歳で毎田仁郎氏に師事し、加賀友禅の一連の工程を身につける。昭和五十八年独立。平成六年、伝統加賀友禅工芸展で金賞受賞。以来多数入賞を果たす。平成十一年加賀友禅技術保存会会員に認定。
着る人には「図案に盛り込んだストーリー性を楽しんでもらいたい」という。

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