啓発情報誌 ス・テ・キ
特集.伝統工芸に見る 金沢四季の意匠【秋編】
秋の金沢風情に想いをはせる、図案コレクション
頬に澄んだ空気を感じたら、金沢の秋のはじまり。
今も昔も変わらぬ季節の風情や草花を、匠の筆があざやかに描き出す。

   

 

 

  

 

 

 

花芽友禅
花芽友禅
花芽友禅
花芽友禅
金沢九谷
金沢九谷

 草花に露が宿る秋の早朝。兼六園の木立を借景にした茶庭玉泉園は、一層しっとりとした表情を見せます。この様子を表した「白露」とは、なんと清々しい名でしょうか。 旧暦九月九日は陽の数である「九」が重なることから「重陽の節句」と呼ばれます。「菊の節句」とも言われ、古来、不老長寿の力があると信じられる菊の花弁を浮かべた酒で長寿を祈りました。
 九月半ば過ぎ、中秋の名月は一年で最も美しい月とされます。金沢市内の料亭や寺院では風雅な月見の茶会や観月句会が催されます。この日は秋の収穫を祝う日でもあり、三方に月見団子をのせ農作物や秋の七草(萩・薄・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗)を飾る風習もあります。
 暑さ寒さも「彼岸」までと言われるように、秋のお彼岸を過ぎれば街を歩く人々の装いも木々も秋仕立てに。紅葉の錦は卯辰山から街中へと広がります。紅葉滝の異名を持つ兼六園の翠滝は、左右で品種の違う楓がそれぞれに色づき、格別の美しさを誇ります。
 九月下旬、城の石垣に必要な石を引いたことから石引町の名を残す、小立野・石引通りではその歴史を再現し、大きな戸室石を曳く御山祭りが行われます。市内各神社で秋の祭礼が催されるのもこの頃です。夜の風情もひとしお。ライトアップされた金沢城や兼六園は、街中の喧騒を忘れさせる静寂のひとときをもたらします。

 朝夕に肌寒さを感じる「寒露」の頃、犀川の河川敷では、この川のほとりに生まれ育った作家・詩人、室生犀星を偲ぶ犀星祭りが行われます。秋風が爽やかな犀川の土手には彼岸花、秋桜が咲き乱れ、格好の散策路となります。
 日が駆け足で暮れる「立冬」。木枯らしと小春日和が交互に現れて、そろそろ冬の足音が聞こえる頃、兼六園では立ち木を雪から保護するために枝を縄で吊る「雪吊り」作業が始まります。木々は円錐形の美しい幾何学模様に飾られ、人々も長い冬への心準備を始めます。
 「小雪」が来れば冬の訪れももうすぐ。長町界隈では雪から土塀を守る「薦かけ」が見られます。長町武家屋敷街を挟んで流れる大野庄用水と鞍月用水は江戸時代からの歴史を持つせせらぎ。百万石の時代に思いを馳せるそぞろ歩きも楽しいものです。

※白  露…九月八日頃
 秋の彼岸…九月二十〜二十六日頃
 寒  露…十月九日頃
 金沢城・兼六園ライトアップ〜秋の段〜
 十月三十一日〜十一月二日、十一月七日〜九日
 立  冬…十一月八日頃
 小  雪…十一月二十三日頃

蜻蛉
蜻蛉
栗
楓・紅葉
楓・紅葉
秋桜
秋桜
薄
秋草文様
秋草文様
枯葉
枯葉
月
菊

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