茶事の文化が育んだ音の深遠
深く余韻のある音響が特徴の銅鑼は、茶事において重要な役割を担い、通常「大・小・大・小・中・中・大」と七点打つことで、腰掛にいる客を迎える合図となります。また手術前の精神統一のために叩くという医師もいるといいます。銅と錫の合金「砂張(さはり)」を鋳造し、音色を考えながら鎚打ちを行い、最後に漆で仕上げるという銅鑼の製作工程には、優れた音感と高度な鍛造技術が求められます。
「音が宇宙か、宇宙が音か 音は宇宙のはじまりである」
砂張銅鑼を生んだ初代魚住為楽が残した言葉は、その優れた技術と銅鑼の音色とともに、今に受け継がれています。
魚住 為楽 氏●うおずみ いらく |
高等学校在学中より祖父・初代魚住為楽に師事。砂張を用いる高度な金工技術を継承し、砂張銅鑼の柔らかで奥行きのある音色を守り続けている。平成十四年、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。
伝承が難しい音というものについて、「良い音はからだで覚える」という。 |
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和の風情あふれる、色と模様の饗宴
かつて雨の金沢の街には、いたるところに和傘の花が咲き、その美しさを競い合いました。実用面では洋傘が台頭したものの、今も金沢和傘の伝統技術は受け継がれ、インテリアの一部としても愛用されています。
金沢和傘の真骨頂は、それを開いたときに表れる、鮮やかな色彩と文様にあります。秋晴れの日の外出に携えて行きたい日傘には、色鮮やかな楓の葉が漉き込まれ、傘を持つ人の美しさを引き立てます。
雨雪が多い金沢で育まれた技術を受け継いで、手入れが良ければ半世紀も使うことができる丈夫さを身上としている和傘には、ものを長く大切に扱う日本の美学も表れています。
松田 弘 氏●まつだ ひろし |
金沢和傘製作の全工程を一人で手がけることのできる全国唯一の職人。傘職人であった父親の方針で、傘貼り、骨削りなど、あらゆる工程の技術を習得。県外、海外からの注文や修理の依頼が絶えない。
こだわりは「持つ女性の姿をいかに美しく見せるか」ということ。 |
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