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香立 |
豪奢な黄金の光を放ちつつも、どこか儚げで雪のように消えてしまいそうな金箔。その厚み、わずか一万分の一ミリ。英語ではgold
leafといい、はらはらと舞う黄金の葉を思わせます。この金箔づくりの技術を支えているのが箔打紙です。
金箔の製法には、和紙を独特の製法で仕込んで箔打紙として用いる「縁付(えんづけ)」と、特殊紙にカーボンを塗布して用いる現代的な「断切(たちきり)」の二つがあります。縁付は箔打紙によって生まれる柔和な風合いが特徴で、主に神社仏閣や高級仏壇、文化財の修理などに使われます。
縁付製法の箔打紙の素材となるのは、金沢産の中島紙や二俣紙。三〜四ヶ月におよぶ紙仕込みの工程では、和紙表面に薄い膜を作るため、和紙を「アク」(灰汁)に浸す・叩く・乾かすという作業を繰り返します。アクに柿渋や卵を加えることで、上質の箔の条件である「ナリ」(箔のハリ)と「光沢」と「トケ」(なめらかさ)を満たした、しなやかで強い箔打紙が仕上がります。この工程ののち、箔打紙は初めて金合金を挟み込み、柔らかな光を放つ金箔を生み出します。
職人によっては異なる表情を見せる金箔は、その輝きに箔職人一人ひとりの心意気を映しているかのようです。
コラム |
銀箔彩々 |
金沢では金箔が全国生産高の九九%を占めているほか、銀箔においても一〇〇%シェアを誇っています。銀箔はいぶすことで、その色を青、赤、黒と鮮やかに変化させます。それぞれの色には青貝箔、赤貝箔、黒貝箔という美しい名前が付けられており、銀の色を楽しむ商品も多くあります。
銀の色の経年変化も積極的に楽しみたいもの。歳月を経た銀の「黒」は、工芸品の風格を表す味わい深いものです。 |
熱野
嘉和 氏●ねつの よしかず |
伝統工芸士。伝統的な「縁付(えんづけ)」技法を頑なに守り、箔を打ち続ける箔職人。祖父の代から続く箔打職人の家に生まれ、幼い頃から早朝、深夜と一家総出の箔打を経験。中学校を卒業後、祖父、父の後を継ぐ。箔職人の真の面白みは四十歳を過ぎて、「箔づら」の違いが分かるようになってからだという。
良い金箔は、「良い箔打紙から素直に出てくるもの」という。 |
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