第3回 加賀蒔絵の時計文字盤
田村一舟氏 数人が集まって取り組んだ試作品 |
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ボヴェの自動巻き腕時計「風神」(右)と「雷神」(左) 加賀蒔絵とスイスの高級時計との出会い、この試みのきっかけは1999年に金沢で開催された「第2回世界工芸都市会議」に遡ります。この会議でスイスの機械式時計作りの話を聞いた金沢漆器商工業協同組合の青年部のメンバーが、腕時計の文字盤に加賀蒔絵を使えないかと考えたのが始まり。試作品をつくり、2002年春、スイスで開催された腕時計の国際的な見本市「バーゼルフェア」に出品、細密画をほどこした美しい時計で知られるスイス・ボヴェ社とのコラボレーションが実現しました。現在、数名の作家が文字盤制作に取り組んでおり、ビジネスとして軌道に乗りつつある状況です。 スタート時点から中心人物のひとりとして関わり、2003年春にジュネーブで開催された新作発表会に出品された「風神雷神」モデルを制作した蒔絵師、田村一舟さんにお話を伺いました。 「苦労したのはまずはその薄さ。時計の針に影響が出ないように、文字盤の厚さはわずか0.3mm以内。何度も厚さを測りながら進めます」。ルーペでのぞきこみながら、希少品として知られる琵琶湖のクマネズミの毛から作られた筆を運んでいくのは、息も出来ないほどの繊細な作業。近づいてみると、精緻な美しさと、相反するような躍動感に目を奪われます。注文を受けてから納品までに早くとも数ヶ月は要するというのもうなづける逸品です。苦労の甲斐あって製品は高い評価を得ており、たくさんの雑誌に取り上げられるなど、大きな注目を集めています。 現在は間近に迫った今年の見本市の準備に忙しい毎日。ジュネーブでは中国の皇帝にも愛されたという歴史を誇るボヴェの細密画の職人と肩を並べて、実演も行われるそうです。「スイスの職人たちに負けないようなものを作っていきたいですね」と田村さん。加賀百万石の伝統に培われた加賀蒔絵の技が、世界に羽ばたこうとしています。 協力:ボヴェ・ジャパン 金沢漆器商工業協同組合 |
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