ブックタイトルステキ Vol.16
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ステキ Vol.16
ていた。歩美は東京でバリバリのキャリアウーマン。早くに結婚した由紀子は良きママに。昌枝は高校で数学を教えている。私といえば、最近お茶を再開して、あらためてその奥深さにはまっているところ。歴史ある茶室があちこちに残り、茶碗、棗なつめ、釜、銅ど鑼ら、香合、花入、袱ふ くさ紗などさまざまな茶道具の作り手がいて、老舗和菓子屋がのれんを守り、老若男女がお茶を嗜んでいる金沢。学生時代はそんな環境を当たり前に思っていたけれど、金沢を離れてはじめて、あれほど茶道文化が深く根付いているのは、加賀藩百万石の歴史を背景にしたまちの個性なのだと気づいた。同窓会の案内が来たのは三か月前のこと。パーティの前に記念茶会も開かれるというから、懐かしい仲間で連絡を取り合い、絶対参加しようねと盛り上がった。大学の茶道サークルで出会った私たちは、金沢のまちに暮らして、将来の夢を語り合って、お茶のお稽古を重ねて、些細なことに笑い転げて、そんな毎日を送っていた。「卒業しても毎年集まろうね」なんて約束を交わしたけれど、大学を出てそれぞれ地元に戻ると、想像以上に忙しい毎日が待っ工芸文化が凝縮された茶室空間に懐かしい顔が集まれば、芳醇な「金沢時間」が流れ出す集う茶道文化が息づくまち金沢道具一つひとつに、美意識が匂い立つ伝統工芸が離れて過ごした時をつなぐつなぐ物語六お茶席でひと際映える加賀?の古こぶくさ帛紗など。古帛紗「銀杏」、お茶帛紗「露芝」、数すきや寄屋袋「彩る」/いずれも宮越仁美?工房s u t e k i 20